2024年パリ五輪クライミング女子ボルダー&リード4位,森秋彩(もりあい)選手はメダルに手が届かなかった。しかし彼女が世界最高の舞台で演じた垂直のドラマは多くの人の心に刺さった。ボルダー第1課題0点から始まった厳しい戦いはリードで一転した。最高高度へと手を伸ばす森選手の勇姿は深く記憶された。ボルダー7位から得意のリードで追い上げての4位。リードでは一時はトップに立ち大歓声を浴びた。森選手の高い技術は知られていたが大舞台で危機的状況を打開した精神力は世界に称賛された。▽森秋彩選手『柔道の阿部一二三さんの試合の時、私はまだ日本にいて五輪をテレビで見ていました。(妹の)詩さんが、すごく悔しい結果でした。その後に試合に臨んだ一二三さんが、しっかりと金メダルを獲得した。お兄ちゃんが約束を果たした。それがとても感動的でした。自分も頑張りたい!と思いました』二十歳で臨んだ初めての五輪『4年後のロサンゼルス五輪、その先何回でも五輪には出場したい」154センチ、大学3年生のヒロインが胸の内を明かしたのは江東区のクライミングジム“フィッシュ&バード”で行われたクライミング体験会だった。そこには東京2020オリパラ以降のメディアの現在の状況があった。集まった20人程の取材陣の内訳はテレビ局、新聞社、クライミング専門誌、そしてインフルエンサー。インフルエンサーは20~30前半の女性が6~8人。皆、ジャージ姿でシューズを履いてクライミング体験の準備万端。講師を務めた森選手、東京五輪銅メダリスト野口啓代さんの指導のもと積極的に壁に挑んでいた。その模様を互いに携帯電話で撮影しあっていた。奇をてらう事なく自然体でホールドに挑むインフルエンサーたち。”通り一辺倒のスポーツ報道”とは異なった味付けで、6人6様にクライミング体験談、楽しさ難しさをフォロワーに伝えるのだろう。都会の片隅から発信される新しいクライミングの一面。東京大会から新競技となったアーバンスポーツ。スケートボード、BMX、ブレイキン、そしてクライミングも同じジャンル、アーバンスポーツ競技だ。学校の部活動などに残る体育系タテ社会ではない。自由に始めて自由にやめることができる。都市に息づく遊び心。メダル獲得する事とは違うスポーツ価値観が、新しい世代の中で確実に育まれている。