【健脚と梅の花】
かつて市民マラソンの代名詞的な存在だった青梅マラソンが3年ぶりに開催された。
青梅にはマラソンを愛する人々が溢れ,梅の花が綻び、ランナーたちの背中を押す地元の人達の声援が、奥多摩街道にこだました。
3年ぶりの青梅マラソン。ランナーたちと走る喜びを出来るだけ共有をしようと尽力したのがシドニー五輪金メダリスト高橋尚子さんだった。
10キロのスタート前には、スタート台から激励し、ゴール地点では1回1回、ひとり、ひとりと、手のひらを消毒しながら、ハイタッチしていた。
30キロでは、先頭に立って集団を引っ張るのではなく、一番最後からスタートして、しんがりから、コースを走るランナーたちに声をかけて走っていた。
「がんばれ」
沿道からの声援
「がんばれ」
金メダリストからの声援
日常生活で、全くの他人から、
そんな声援を投げかけられる事は、ない。
家事、子育て、通勤、ごみ捨て、掃除、満員電車、面接、試験、商談、会議、プレゼン…「がんばれ」
高橋尚子さんはかつて、名伯楽、小出監督と共に千葉の印旛沼あたりを連日、走っていた。
近隣の人達は、その姿に激励を送ったはずだ。
「がんばれ」
ランニングの妨げにならない様に、声援を送ったはずだ。
将来有望な少女ランナーが好奇の眼差しの強さに戸惑い、試合への出場を取りやめてしまった。
「がんばれ」
それはランナーの背中にそっと投げかけるものであって欲しい。
早春の青梅路の、市民たちの様に。