プロ野球が誕生して100年を超えた今、前例のない新たな時代の到来を示すことが次々に起こっている。
もし時間が生き物で、寿命があるならば、それを100年=1世紀だとすると、この100年の間に、親から子、子から孫と受け継がれてきた野球の様々なDNAは劇的な変異を来たし「新しい人・ミュータント」として出現し、野球の新しい地平を歩み始めている。

数々のMLB記録を100年ぶりに更新するエンゼルス大谷翔平の姿が正にそれで、これまでの常識や価値観を簡単に飛び越えるパフォーマンスはミュータント故に、為せるワザといえよう。
ロッテ佐々木朗希の恐るべき剛球、そのボールの生死を掌る18歳、捕手の松川虎生。
22歳のスラッガー・ヤクルト村上宗隆のバッターボックスでの立ち姿と、弾き返され、一瞬にして彼方へと消えていく打球。
村上はシーズン本塁打55本、あの世界のホームラン王・王貞治に並んだ。
王も村上も同じ高卒でプロ野球の世界に飛び込んだが、当初、王は三振王と揶揄された時期があった。
三振王がホームラン王へと変貌を遂げた大きなきっかけは、片足を上げて、軸足だけで立って、踏み出す勢いをもパワーに変えて、ボールを叩く文字通り劇画的な打撃フォーム「1本足打法」の修得だった。
時には日本刀を振り、精神を鍛錬し、求道者の如き容貌で投手と対峙していた。

神宮の杜に現れた村の神は、両足でしっかと大地を踏みしめて、凛と立ち、豪快に振り抜く。
新しい時代を拓く野球界のミュータントたちの背中は、実に頼もしい。