記念すべき日、格闘技の聖地・後楽園ホールは、いつもと違う表情で観客を出迎えた。5月19日は日本のスポーツ史が変わった日である。

70年前の1952年、後楽園球場の特設リングで”日本人最初の世界チャンピオン”が誕生した。

観客を出迎える様にロビーの特設コーナーに飾られたのは白井義男さんが愛用したガウン、グローブ、トランクスなどのゆかりの品々。

世界チャンピオン誕生はボクシング界は勿論、スポーツの枠を超え国民が熱狂した戦後を象徴する快挙だった。

今、ボクシングの世界タイトルマッチを手軽に観戦することが難しい時代を迎えている。

ビッグマッチになれば成るほどに、日本のテレビ局では抱えきれない高額な放送権料となり、地上波放送は見送られ、観戦はペイテレビと成りつつある。世界タイトルマッチを無料で観戦する時代は、残念ながら終わりの様だ。

弊社のライブラリーを紐解くと、70年前、白井選手のタイトルマッチは日本列島が注目する一戦だった。対戦相手の王者・ダド・マリノ選手は、来日から大きなニュースとして扱われていた。

映像は意外な場面から始まる。

試合を前に、白井選手は羽田空港を訪れる。マリノ選手を出迎える為だった。更にマリノ選手と銀座周辺をオープンカーでパレードまで行っている。

対戦するふたりが、集まった人々に、そろって手を振る姿はボクシングが決闘ではなく「スポーツ」である事を示す貴重な場面といえる。

「ボクシングの素晴らしさを伝える役割」セピア色の映像の中で、白井選手の背中は大きく見えた。

日本人初の世界チャンピオン白井義男選手の回顧イベントは6月11日(土)草加市でも開催が予定されている。