今年の柔道日本一は二十歳の若者だった。身長193センチ体重168キロの堂々とした佇まい、父譲りの大きな背中は、日本武道館の青畳に映える。国士舘大学・斉藤立(たつる)、あの五輪連覇を果たした斉藤仁の次男。

スポーツ暦では、すっかりお馴染み、端午の節句の大一番。
4月29日は、北の丸に鎮座する“大きなタマネギ”の中、たった1面の青畳を舞台に数知れぬ戦いがあり、強者たちが、それぞれの思いで、天井の日の丸を見上げてきた。

斉藤立の父、仁さんは、この舞台で、山下泰裕という巨大な壁に何度も跳ね返され、全日本は「五輪よりも高い場所」とさえ表していた。

まだインターネットがない時代—現役引退、ご結婚、全日本コーチ時代—取材の際、実直で人懐っこい斉藤さんの素顔に何度か触れる幸せな時間があった。

心優しき、チカラ持ち。

屋根より高い こいのぼり
大きい 真鯉は お父さん
小さい 緋鯉は 子供たち
面白そうに 泳いでる

初めて達成された親子での全日本選手権、戴冠。
小さかった緋鯉は、大きな父に並び、更なる高い空を目指している。