テスト入団でプロ野球の世界に足を踏み入れ。選手としては打撃を生かし捕手ながら三冠王。更に捕手をしながら監督も務めた。はぐれそうになった才能を再び磨き直し、再生させた。野村克也さん、その手腕は球界の奇跡といえる。しのぶ会は柔らかな日差し指す師走の神宮球場。祭壇の前に多くの野球人たちが顔を揃えた。選手たちの個性を引き出せたのは、野村克也さんの人間に対する確かな観察眼、そして野球に対する知恵と工夫と愛情があってこそだと思う。

ヤクルト監督時代、キャンプ地・西都で直接、お話を伺う、僥倖を得た。

「球技って言うのは大まかに4種類に分けられる。1つ目がゴールにボールを入れて得点となるサッカーや、バスケット。2つ目が相手のコートにボールを入れて得点となるテニスや、バレーボール。3つ目がゴルフの様に目標にボールを入れて得点となる競技。でも野球だけが違うんや。ボールがホームに戻っても得点にはならん。野球だけは人間がホームを踏んで得点なんや。だから野球ってのは、実に不思議な競技で、得点や勝ち負けに、人間の関わる部分がとても重要だ、そう思わんかね」

人間の可能性を最後まで信じる事の大切さ。

野村克也さんが日本の野球史に残した功績は、計り知れない。