20世紀最高の傑作映画と呼ばれる、セルゲイ・エイゼンシュテイン監督の「戦艦ポチョムキン」
エイゼンシュテイン監督が唱えた”モンタージュ理論”はその後の、映像表現の最も重要なものと言われている。
それは異なる映像断片のぶつかり合いが生み出す、イメージ想起。
モンタージュ理論の代名詞といえるシーンが戦艦ポチョムキン終盤の「オデッサの階段」の場面である。
黒海に面したウクライナの都市・オデッサ。その市街地へと向かう階段を舞台に繰り広げられる映像のぶつかり合い。銃口、阿鼻叫喚となる民衆、階段を勝手に下り始める乳母車。
銃口は火を噴き、民衆は倒れ、乳母車が揺れる。緊迫の中で、カットが激突する。
それは20世紀の、モノクロームフィルムの中だけの世界、であった。
今、ウクライナで、ロシア軍の銃口は民衆にも向けられている。
映画ではなく、悪夢の様な現実が続いている。