2016年12月16日文京区春日町の周辺の空気は、いつもと違う緊張感に包まれていた。
日露会談の為に急遽来日したプーチン大統領がやってくるからだ。日本での総滞在時間はわずか26時間。離日直前、最後のスケジュールが柔道の総本山・講道館訪問だった。講道館では政府要人と山下泰裕氏が青畳の上で、もてなすこととなっていた。

講道館の正面に鎮座する嘉納治五郎師範像。
大正時代から五輪招致の先頭に立った嘉納師範は、古来からある効率的に相手を殺める武闘術を、心技体を研く「武道」へと創り変えてみせた。試行錯誤を繰り返し「五輪競技・柔道」を創り上げた開祖は静かに訪れる者を見下ろしている。
柔道家を自称する”寒い国から来た皇帝”の総本山表敬訪問はたっての願いだと聞いた。

そして講道館訪問は文字通り電撃的だった。安倍首相らと共に演武を鑑賞し、ご満悦の様子で、そそくさと帰路へと着いた。

今や、暴君と化した、自称柔道家。残念ながら柔道を武闘術としてしか学んでいなかったようだ。

【嘉納治五郎師範 遺訓】
柔道は心身の力を最も有効に使用する道である。
その修行は 攻撃防禦の練習に由って身體精神を鍛錬修養し斯道の真髄を體得する事である。
さうして是に由って己を完成し世を補益するが柔道修行の究竟の目的である。