【野球狂のチャンピオン】
巨大なアルマイトの弁当箱に満杯の白飯、真ん中に梅干しひとつ。
野球を弁当に例えるならば、真ん中の梅干しが野球の常識で、それを取り囲む広大な白飯の部分は個性。白飯=個性には無限の可能性があるのだ。どんなおかずを手に出来るかで、どんなに巨大なドカベンでも完食できる。だから臆することなく己の個性を見つけて磨いて、見つめて研いで、とにかく野球を愛しなさい。野球を愛する自分たちを愛しなさい、と。
ドカベンも野球狂の詩も、一見、短所に見える個性が、唯一無二の武器になると教えてくれた。
ピアノの天才ならば音楽的な発想で、悪球打ちでも、足が速いだけのチームでも、体が頑丈なだけでも、そして女性でも、「野球」には個性を磨けば己を生かす道は必ずある。
野球を楽しむ方法を各々が自由に考え何か糸口を探せば、きっとできる。そのくらい「野球」というやつは懐が深く、どこまでも探求が出来る「可能性のスポーツ」なのだと、水島新司さんは誌面を通じて少年少女にエールを送ってくれた。
先に旅立った同志、野村克也さんと同じ様に「野球の深淵」を楽しんで、追い求めた野球狂。
その旅立ちに寄り添う様に、BC茨城の松田康甫投手(23)がMLBドジャースとマイナー契約をした。松田康甫って?WHO?無名の剛腕が野球の母国で果たしてどんなストーリーを描けるのか。
一方で、こんな妄想も頭を擡げる。
ドカベン・山田太郎が野球に出会わずに柔道を続けていたら、どんな結末になっていたのだろうか。