【逃亡の果て】令和三年、怪物と呼ばれた松坂大輔がマウンドを去り、その旅立ちに天才・イチローがシンプルかつ劇的な別れを告げた。ハンカチ王子と呼ばれ多くの女性の眼差しをグランドに向けさせた功労者、斎藤佑樹もユニフォームを脱いだ。

そんな中、近況が気になる野球人がいる。

今年5月に失踪、蒸発した元・中日ドラゴンズコーチ門倉健さんの行方である。5月に練習を無断欠勤し家族から捜索願が出され、退団届だけが球団に郵送された。失踪先、その理由は謎のままだった。およそ1ヶ月の捜査劇が始まる。その範囲は東海地区、関東地区、そして全国へと広がった。その訳は門倉の野球人としての行動範囲の大きさにあった。埼玉で生まれ育ち大学は宮城県の東北福祉大。中日ドラゴンズに入団し、近鉄、横浜、巨人と移籍し、米・シカゴ・カブス、韓国プロ野球、そして宮城県のクラブチームと多くの土地で過ごしてきた。ただ何処に身を潜めていようとも「世界遺産級の個性的な顔面のフォルムはマスク着用ぐらいでは隠しきれない」と、思った。最後は8月、北陸の海水浴場にある海の家で働いていた、とされる。恋の逃避行との報道もあった。

北陸に、マスクのモアイ、身を潜め。

冬の能登なら演歌にもなりそうだが、夏と逃避行というのは微妙な組み合わせに感じる。強烈な個性を持った男は、野球ファン、メディア、そしてコロナに追われて、逃れて、今、何処。